キレンゲショウマに限らず、霧立山地にはまだ多くの種類の絶滅危惧指定植物がひっそりと生息しています。
そんな絶滅危惧の植物がどのような状況にあるのか、どうやって守っていったらいいのか、五ヶ瀬町自然マイスター協会では話し合いを重ねています。
鹿の増殖について
鹿の食害による植物の減少については、まず天敵である「鹿がどうして増えたのか?」ということを知っていただきたいと思います。
地球の温暖化、拡大造林政策による急激な人工林化によって、木々や鹿の餌であった「スズタケ」に異変が起こり始めたのが20年ほど前です。
20年ほど前、かなり最近だと思いませんか?
元々あった場所に鹿の餌となる植物が無くなり、鹿は餌を求めて移動を始めます。
移動した知らない場所で、鹿は初めての植物を目にし、生きる為に何でも食べてみるようになったのです。
ワサビやキレンゲショウマなど、これまで鹿が食べなかった物まで食べるようになりました。
鹿の雑食化が進み、ついにはズナラの実などのドングリやミズキの実、栗の実などを食べるようにもなります。
こうなるとどうなるか。
草食動物が高蛋白、高脂肪の餌を摂取するようになると体質に変化が起きてきます。
動物は、栄養が豊かになると多産系になります。
これまで4~5歳で出産していた鹿が、体が小さな1歳そこらで繁殖を始めるのです。
結果的に鹿が増殖してしまう・・・という結果に。
キレンゲショウマの鹿の食害
夏に黄色い花と実をつける可愛らしい花、キレンゲショウマ。
昔は盆花としてもっと身近にあった花だといいますが、今では絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
五ヶ瀬町の霧立越には、かろうじて群生地が残っており、地元の人や愛好家達によって見守られています。
鹿の食害が始まった20年ほど前から、地元の有志で鹿が入ってこないようにする為の防護柵が設置されています。
しかしこの防護柵、老朽化してもメンテナンスする大きな団体も無く、低い柵は簡単に鹿が飛び越えて入ってきてしまい、秋に成った実を食べられてしまうというループが絶えません。
キレンゲショウマの人害
可愛いキレンゲショウマを写真に収めようと、開花シーズンには場所を知っているファンが来られるようです。
キレンゲショウマの群生地と言うのは湿地帯で、地盤が緩く、足場が悪いのです。
カメラを向けるうちにキレンゲショウマの根元を踏んでしまい、それが大人数続くと、ダメになってしまっている株も多くあります。
こうした問題もあり、この五ヶ瀬町自然マイスター協会では、地元とマイスターが協力して観賞用の木道を造ろうという話が進んでいます。
資金や人材が乏しく、なかなかすぐに全体が完成というのは難しいですが、2022年のシーズンに向けて何か少しでも活動が始められたら・・・と協議を重ねています。