五ヶ瀬町で唯一の手づくり豆腐屋さん。
創業70年で二代目となる「菊池豆腐店」が、2023年5月末をもってお店を締めることになりました。
五ヶ瀬町の役場近く、赤谷商店街で70年営業を続けてこられた豆腐屋さんは、これまで地域の皆に愛され、地元の学校給食でもお馴染みでした。
様々な時代の流れによる閉店は、地域にとって非常に残念なこと。
五ヶ瀬にこの美味しい手作り豆腐屋さんがあったこと、ここにしっかりと記録として残したい。
今回筆者の無理を聞いて頂き、菊池豆腐店さんへ取材をさせていただくことができました。
朝の仕込みは早朝3時30分前から
おそらく、五ヶ瀬町で一番早起きをしているだろうと思います。
豆腐の仕込みは毎朝3時30分前には始まります。
この日の朝につくる量は、豆腐80丁に油揚げ200枚。
前日から水に漬け置いた大豆。
漬け置き時間は季節ごとの気温も影響されるそうです。
こちらの店舗(加工所)の稼働は50年ほどで、創業当初は今あるお店の上の方にあったそうです。
豆腐づくり工程
摩砕(まさい)
前日から水に漬けてたっぷり水分を含んだ大豆を機械に入れて細かく砕き、液状にします。
蒸気加熱
液状になった大豆を蒸気で加熱します。
先代の創業当初は地釜で加熱をしていたそうですが、今はボイラーで温度管理をしながら100℃ほどになるまで加熱します。
加熱することで大豆タンパクが凝固しやすくなり、成分が最大に溶出されるそうです。
菊池豆腐店二代目の工藤はる子さん、他の仕事をしながらも絶えず温度計を見てました。
温度管理はかなり重要な様子。
搾り
水に漬け、搾ります。
ここで豆腐になる前の「豆乳」が出来上がります。
豆乳が出てきた時には加工所内に大豆の香りが広がっていました。
出来立ての豆乳をいただきましたが、濃厚な大豆の味と香りで、スーパーに売ってる〇〇味の豆乳よりも美味しかった!
これだけでめちゃくちゃ健康になった気分です(笑)
そしてこの搾りの工程で出るのが「おから」です。
昔よく私の祖母が作ってくれていたおから料理を思い出しました。
おからと牛すじ煮込みやおからとひじきを煮た料理、美味しかったなぁ。
今は町内の牛畜産農家さんのところで牛の飼料となっているそうです。
(五ヶ瀬の牛、いいもの食べてる!)
型入れ・凝固
この工程はよくテレビなどでも見たことがある!
豆乳を専用の箱に詰めて、凝固させます。
凝固させるために、専用の機械を使います。
この機械、一気に重量をかけるのではなく、徐々に重量がかかるようによく考えられています。
こちらは揚げ豆腐専用の凝固箱で、ご主人のお手製なんだとか!
いい味出してます♪
五ヶ瀬の人は何でも手作りしちゃうんです!
完成・カット
なんだかベッドのマットレスみたいで気持ちよさそうです^^
これを売られる豆腐サイズに手作業でカットします。
水さらし
カットされた豆腐を水にさらします。
水に浸すことで、豆腐から水分が抜けるのを防ぎ、みずみずしい食感を保ちます。
大豆の苦み成分やニガリ成分が抜けて、 よりおいしくなります。
水に浸かってる豆腐がなんとも気持ちよさげです♪
パッケージ
十分に水に浸かった豆腐たちは、お馴染みのパッケージに包まれていきます。
この機械もレトロでカッコ可愛い!
これで出荷前のお豆腐が完成!
3時半から始めた作業ですが、6時半~7時頃にバケツ1つ目が完成していました。
80丁の豆腐と200枚の揚げが完成するのは午前10時頃になるそうです。
油揚げ
油揚げ(揚げ)は原料に粉大豆を入れます。
低温で30分、さらに高温で30分、揚げます。
揚げている間も何度も返しながらの作業、かなりの手間暇がかかっていました。
こんがりと揚がったばかりの油揚げは格別!
醤油やポン酢と大根おろしなどでそのまま食べてもよし、お味噌汁のお供にもよし。
マヨネーズをつけても美味しいと教えていただきました!
出来立ての豆腐に揚げたての揚げをいただきました!
なんとも贅沢な朝です。
(最高!早起きしてよかった♪)
廃業・後継者について
70年も続けた町のお豆腐屋さんが終業してしまうのはとっても悲しいです。
五ヶ瀬に限らず全国の田舎町で、小さなお店の後継者がおらずに終業してしまうケースは度々聞き及びます。
機械化で何でも大量生産が可能な世の中。
スピードや価格などを考えると、どうしても事業持続が困難になるのかもしれません。
それに加えて昨今の原材料の高騰は、小さなお店にも大打撃を与えています。
でも、もしかしたら、日本中、いや世界中でも探したら、このお豆腐屋さんを継いでくれる人が現れるかもしれない・・・。
そんな期待も僅かながら残っていますが、まずは二代目の工藤さんご夫妻、50年あまり本当にお疲れ様でした。
奥様のはる子さんのお母さんが70年前に始められた菊池とうふ店。
きっとはる子さんのお母さんも、長年頑張ってくれたお二人を褒めて笑顔を向けてくださっているでしょう。
地元のスーパーAコープや特産センターごかせ、学校の給食でこの豆腐や油揚げが見られるのはあと1ヵ月ほど。
個人的に、私は五ヶ瀬に来て2年間ずっとこの菊池とうふが好きで食べていただけに残念ですが、お二人に大きな敬意を表します。
本当に、ごちそうさまでした。
編集後記
近所からはこうやって豆腐を買って帰る方もまだまだ健在です!
古き良き“買い物文化”も見られた気がしました。
仕事中は言葉少ないけれど、阿吽(あうん)の呼吸で進められる仕事に見入ってしまうこともしばしばでした。
とても仲が良いご夫婦を見ていて、私もホッコリ元気を頂きました^^
店名 | 菊池豆腐店 |
住所 | 宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町三ヶ所10685−2 |
TEL | 0982-82-0131 |
地図 |
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